シミ抜きできない色留袖、訪問着にすることで解決!?

今回は、「シミ抜き困難」と言われた着物のメンテナンスの事例です。
お預かりしたのは「色留袖」。
淡いピンクの色合いと、繊細な柄が美しい着物です。
着物をお預かりした後は、シミのある部分を細かくチェックしていきます。
・柄の中
柄の中に茶色く変色したシミが点々と見られます。
シミ抜きの作業は難しいと判断したため、お客様には「柄足し」をご案内しました。
柄足しをするとなると、シミが広範囲にあること・全体の色などのバランスを良くすることを考慮して、全ての柄を描き直すことになります。
※柄足しとは、シミの上から絵を描き重ねてカバーする技法のことです。
・無地場(柄の無い部分)
無地場もシミが広範囲に出ていました。こちらも染み抜きが難しい状態です。これも「柄足し」で解決できそうですが着物のルール上、留袖の無地場にその方法は使えないのです。
柄足しができない理由
着物には種類ごとに設けられたルールがあります。
留袖のルールは「柄は裾周りのみ。上半身は無地」というものです。

〈着物のルールやTPOについての簡単な解説はこちらにあります。〉
上半身の無地場に柄を描いてしまうと、「色留袖」ではなくなってしまいます。
しかし染み抜きできれいにすることは難しい…
そこでスタッフは、こう思いました。
留袖じゃなくしてしまえば良いのでは…?
お客様にさっそくご提案します。
「上半身の無地場に柄を足して、『訪問着』にしてみてはいかがでしょうか?」

訪問着なら裾以外の柄はNGというルールが無いので、着物全体のシミを柄足しでカバーすることが可能になります。
お客様は「その方法でOKです」と、柄足しによるメンテナンスを選択されました。
実際に行った作業
- 柄の中…シミのある部分の上から同じ柄を描き直して、シミを隠す
- 無地場…山の柄を描き、シミを目立たないようカバー
- 他…左胸、袖部分に柄を足す(訪問着には、「柄が胸・肩・袖でつながって描かれている」というルールがあるため)
このような形でメンテナンスを行いました。
・ビフォー&アフター: 柄の中


・ ビフォー&アフター :無地場


・左胸、袖部分(柄足しアフターのみ)


もともと無地の場所でしたが、裾部分と似た柄を描きいれました。全体のバランスを確認しながら、訪問着のルールに沿うように描いていきます。


今回のメンテナンスは、「訪問着が必要だから」という理由で色留袖を訪問着に変えたのではありません。
「この着物をどうしても着られる状態に直して、手元に置いておきたい」
そんなお客様の気持ちに応えたくてご提案した、メンテナンスの手順の一つです。
お客様ごと、着物ごとににお客様の求めることは違っています。
だから、もきもの辻では「お客様にクリーニングメニューを選んでいただく」ではなく、
「まずは着物の状態を見て、お客様のご希望をしっかりとヒアリングする」という方法でメンテナンスをしています。

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