6月14日更新。
6月14日。
今日は「色抜き」という作業をしています。
朝、6時からの作業。
私、藤吉は朝8時過ぎに到着しまして写真を撮らせてもらいました。
ちょうど染め直しを希望されるお客様の着物を色や柄を抜き、白の生地に戻す作業が始まるところです。
うぅっ、室内はめちゃくちゃ暑い。サウナだ。
職人M氏は顔色ひとつ変えずに作業を淡々とこなしていく。
この道五十年越えの超ベテランだ。
私も何かわからないことがあるとこの方に聞くのです。なんでも知っているのです。ホントすごい…
ちょうど色抜きをするために着物地を釜に入れているところです。
M氏 「色抜きといってもね、着物ひとつひとつ加工が違うから抜き方もそれぞれ変える。今釜に入れた生地はとても色が抜けづらい。だからこれは時間がかかるんだよ。その上、墨で描いてある柄も残るだろうから、あとでブラシをかけてひとつひとつ落としていくんだよ。」
そうなんです。このひとつの作業でも時間も手間もかかるのです。皆様が思っている以上に。
M氏 「この釜の中の温度も生地によってかえるんだよ。80度位から95度くらいの間で。それによって抜け具合が違ってくるんだよ。これは経験だね、どんなマニュアルにも載ってないからね。」
少し色が抜けてきた。
確かに抜けづらい生地。
これでももう30分近く経過している。思ったより時間がかかる。それを言うと、
M氏 「慎重にやってる。今日もね顔料(紅型などに使われている)で柄を描いている着物があってね、普通なら見て触ればすぐわかるんだけどさ、その着物は一回色掛けしてあって顔料を見落としそうになった。何年やっても緊張するよ、仕事は。」
非常に高いレベルの話になってしまったが、それだけ着物は複雑なのです。それを見抜く力がないと必ず事故が起きるという。
うーむ、深い…
ここで一度生地を出して薬剤を投入。
ここで皆様からよく言われる誤解をお伝えしてみた。色抜きすると生地が薄くなるんじゃないかとお客様によく言われますと。
M氏 「なるわけないよ。それ昔のイメージだね。昔は生地の薄い品がたくさんあって、色抜きをするともともとは生地に付いてた糊が落ちるんだよ。そうすると生地の張りがなくなって薄くなったように感じていた人が多かったみたいだね。昔だって生地が薄くなることなんてありえない。そのことを着物を預かる人間が説明しないからそんな誤解が生まれるんだね。もっと勉強してほしい。」
そうですね。私も呉服店でのサラリーマン時代はそんな知識確かになかった。呉服業界の人でも9割以上の人はこういうこと知らないんですよね。
私のお客様には極力情報を提供させていただいて、知っていただけるようにがんばりたい。
だいぶ色が抜けてきましたよ。
おおっ、見事に白くなりました。
時計を見たらもう9時20分。結構時間かかりました。
M氏 「ここからが大変なんだよ。残ってる墨の柄を落とさなきゃならない。疲れるんだ、これが。」
と少々愚痴。
しかしすばやく別の釜で水でさらして作業をすすめる。
「これを酵素につけてそれからブラシ(洗い張り)をするんだよ。これは飛び柄だからまだいいけど、生地全体にびっしり柄がある着物だったらたまったもんじゃない。」
これぞ生の声。
そういいながらも着々と作業がすすんでいくのです。
しばらくたって、今度はブラシをかけて残った柄を落とす作業。ここでひとつお叱りをいただいた。
M氏 「色を抜く際にね、たまに『Mさん、生地にスレが出ないようにやってね。』と言われる。
これがすごく腹立つね。こっちはあとで染めにいくことのわかってる着物だから、そりゃあ慎重にやるよ。プロに仕事を依頼する言葉じゃないよね。」
ごもっとも。
この世界はなかなか数字では表せない世界なんです。それが手加減だったり、どの程度まできれいにするのかなど。
でも、そこがプロのすごいところで、その後のことを考えてくれてベストな方法で仕事をしてくれるんだ。これは人間性のレベルの話しだし、なかなかお客様の皆様に伝わらないのが残念なところ。
だからこのようなページで皆さんに少しでも伝わればなと思っているのです。
洗い張りをしています。丁寧に手加減しながらすすめていきます。
私のお客様がいつも非常に喜んでくれることがある。それはM氏がやってくれる洗い張り。
普通洗い張りってどこでやっても似たようなもんだと思うじゃないですか。
ところが。
全然違うんです。M氏は。
とにかく丁寧。きれい。お客様が一番びっくりするのが胴裏。だって黄色かった胴裏が白く新品みたいになって戻ってくるんだから。
私が知っている限りでは、ここまでやるのはM氏しかいない。だからお客様はラッキーだと思う。こんな情報誰も知らないもんね。
よかったらあなたも試してみてください。
そんなこんなで、もう10時半前。
私も今日予約いただいてるお客様のところに行かなければいけないので、名残惜しいけど出かけます。今日は、埼玉、栃木、東京のハードスケジュールです。ですが、M氏の誇り高きこだわりのある仕事を見ていると仕事が楽しくなってきます。
今日伺うお客様にも喜んでもらえる仕事をしようと心から思えるのです。
それは、M氏がいてくれるから。
それでは皆様またお会いしましょう。
プチ情報
★この左の写真、途中で使った薬剤。なんと。
一缶一万円以上するのだ!高い~。
色抜くのにも結構お金かかるんですね…